未翻訳小説を頑張って日々読んでいる日記

未翻訳小説を頑張って日々読んでいる日記

まだ翻訳されていない英米文学をたまに紹介します。

2021-01-01から1年間の記事一覧

驚愕の「神の視点」で白人一家の凋落を南アフリカの歴史と重ね合わせる傑作(The Promise by Damon Galgut)

2021年のブッカー賞受賞作。デイモン・ガルガット(Damon Galgut)は1963年、南アフリカのプレトリア出身の作家。なんと17歳で作家デビューしており、The Good Doctor(2003年)、In a Strange Room(2010年)で過去2度ブッカー賞候補になっている。作品は全…

ネイティヴ・アメリカンたちが奏でる豊潤なポリフォニー(The Night Watchman by Louise Erdrich)

2021年のピューリッツァー賞フィクション部門の受賞作。ネイティヴ・アメリカンの血を引く女性作家ルイーズ・アードリックは、1954年ミネソタ州にてドイツ系アメリカン人の父とネイティヴ・アメリカンのチペワ族(あるいはオジブワ族)の母との間に生まれた…

戦争文学の新たな古典の誕生(At Night All Blood Is Black by David Diop)

ブッカー賞はイギリスの文学賞で英語圏の小説に与えられる賞だが、国際ブッカー賞とは英語に翻訳された小説を対象とする賞で、つまりはブッカー賞の翻訳部門。日本人では2020年には小川洋子の『密やかな結晶』(原著は1994年)が最終候補に残っており、アジ…

「シェイクスピア」が出てこないシェイクスピア一家の物語(Hamnet by Maggie O’Farrell)

2020年の女性小説賞(オレンジ賞、ベイリーズ賞を経て今はこの名称)と全米批評家協会賞を受賞した『ハムネット(Hamnet)』。作者のMaggie O’Farrell(マギー・オファーレル)は1974年、北アイルランド生まれ。wikipediaでは大学で英文学を学んだ後、ジャー…

Shuggie Bain by Douglas Stuart

*宣伝:東京は西荻窪の今野書店で「編集者竹田純」をテーマにしたフェアが好評開催中ですが、そのリニューアル企画として、「謎めいた読書家カツテイクの本棚」つまり僕のフェアが同時開催されます。期間は4月9日から4月末まで。僕が店頭に出ている日は直接…