未翻訳小説を頑張って日々読んでいる日記

未翻訳小説を頑張って日々読んでいる日記

まだ翻訳されていない英米文学をたまに紹介します。

2020-01-01から1年間の記事一覧

Interior Chinatown by Charles Yu

2020年の全米図書賞フィクション部門の受賞作。チャールズ・ユウ(游朝凱)は1976年生まれ。カリフォルニア大学バークレー校で分子物理学と細胞生物学、そして創作を学んだ後、コロンビア大学のロー・スクールで法律を学び、法律事務所で働く。2000年代初頭…

First Person by Richard Flanagan

わかるだろ? 彼はそう言って、机に身を乗り出した。俺はでっち上げてたんだよ。毎日、君みたいに。作家みたいに。(178頁) リチャード・フラナガンはこれまで3冊が翻訳されているので知っている人も多いだろう。1961年オーストラリアのタスマニア州生まれ。1…

Hot Milk by Deborah Levy

作者のデボラ・レヴィは1959年生まれのイギリスの小説家であり詩人であり劇作家。80年代から詩人・劇作家としての活動をしているようで、彼女の演劇はロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで上演されたこともあるそうだ。小説家としてのデビューは1990年。2…

The Sellout by Paul Beatty

2020年8月23日、ウィスコンシン州ケノーシャで黒人男性が白人警察官に射殺されデモが発生、そして26日にはわずか17歳の白人少年がデモ隊へ向けて発砲、3人が死傷した。人種差別が色濃く残っているアメリカだが、今回紹介するのはまさに人種差別をストレート…

Infinite Jest まとめその4(121-198頁)

最初に書いておくと、約200頁まで行ったところでですがこれが最終回です。理由は一番最後に…。 ハル・インカンデンツァ その12(121-126頁) (マリオ・インカンデンツァ今のところ最初で最後のロマンス) 時期:大人用下着年(Y.D.A.U.) 10月 人物:マリオ…

Infinite Jest まとめその3(79-121頁)

これまでのあらすじ エンフィールド・テニス・アカデミー(E.T.A.)の創設者の子供であり生徒でもあるハル・インカンデンツァは、テニスの才能だけでなく辞書を丸暗記するほどの頭脳を持つ天才。なにやらケベック州を中心にアメリカとカナダの国境で陰謀がう…

Infinite Jestまとめその2(32-79頁)

ところで2020年2月末、待望のデイヴィッド・フォスター・ウォレスの翻訳が河出書房から出版された。DFWのテニスに関するエッセイを集めたもので、タイトルは『フェデラーの一瞬』。訳者は『This is a water(それは水です)』を訳した阿部重夫。 買ったばか…

Introduction of “Roberto Bolaño The Last Interview”

洋書を扱う書店に行って海外文学の棚を眺めていると、表紙が似顔絵になっている薄い本を見つけることができると思う。それが『The Last Interview』シリーズで、その名の通り、すでに亡くなった作家のインタビューを集めたものだ。このシリーズにはアーネス…

Infinite Jestまとめその1(1-32頁)

アメリカ現代文学最大の作家の一人にして、早逝の天才デイヴィッド・フォスター・ウォレス。彼が1996年に出版した『インフィニット・ジェスト』は90年代以降のアメリカ文学史において半ば伝説化されている。 この未だに翻訳されていない大長編の概要と、出版…